no. 94

Thème central

9èmes Journées d’étude et de formation en enseignement du japonais en France

Conférence (dont le thème sera choisi par les participants) et atelier
 (M Michiharu WATANABE)

30-31/05/2025
NAGASHIMA Mie

5月29日・30日の二日間にわたって行われた渡辺道治先生の「自由選択講演」は今まで体験したことがないタイプの講演でした。これは、「お品書き」と名付けられたタイトルの中から、多数決で話すトピックを決められるという大変ユニークなシステム。最初から主体的に関わらせるという参加型のスタイルに私はうーむと唸ってしまいました。というのも、教師からすれば、これは「すべてを事前に組み立てて準備できない」+「先の予想が立てにくい」+「柔軟な対応力が必要」=かなりな数をこなしてこないとできないという、なかなかチャレンジングな試みではないかと思ったからです。

しかし、講師の渡辺先生は、学級経営や児童指導において様々な賞を受賞された、いわばプロフェッショナル。「学級崩壊」を立て直してこられたというだけあり、講演中も教室コントロールが素晴らしく、(教室ではないので、会場のコントロールは完璧と言うべきでしょうか。)講演自体も楽しめましたが、とにかく渡辺先生が手を替え品を替え繰り出す話術とテクニックに「すごい」「なるほど」とメモを取る、発言する、周りと話す、笑う、涙する…のループでした。

「お品書き」の数もいくつかある中から選ぶというレベルではなく、講演用のスライドに余白がないくらいぎっしりと書かれており、まさにチェーン店の居酒屋メニューのようでした。例を挙げると、「学級を安定させる指示の技術」「死人テスト、具体性テスト」「隠れ指示とは」「やる気のパターン15選」「不適応行動を改善する3つのアプローチ」「魔法のことば」等々(なお、急いでメモしたものなので多少の間違いはご容赦ください。)どれも魅力的なものばかり…。(翌日はこれらに関して「キャッチコピーの作り方」として読み手を引きつけるタイトルのつけ方等も教えて頂きました。)私はこの「お品書き」達の内容を全て知りたくなり、店のメニューを全制覇する常連客かゲームステージのコンプリートを目指す学生のような気持ちになり、二日間まんまと先生の策略にハマってしまったわけです。

それぞれの「お品書き」の内容は緩急がつけられ、二回の講演はテンポよくあっという間に過ぎていった感じです。各講演の内容をすべてここでご報告するのは到底無理なお話なので、少しだけ抜粋してご紹介します。

一日目は、行動改善のお話から始まり、その前提として「原因と結果の関係」を捉えることが重要であるとのお話でした。また学級を安定させるための指示には、号令・命令・訓令の三種類があり、それぞれの使い分けがポイントとなります。「号令」は素早い行動を促す反面、趣意が伝わらず反発を生むことがあります。「命令」は趣意を含むため納得感があり、「訓令」はより高度な表現である一方、理解が難しい場面もあると感じました。自分の教室での指示がどれにあたるのか、適切に指示できているのか振り返る良いきっかけになったと思います。

それから、行動指示の精度を高める考え方として、「死人テスト」や「具体性テスト」が紹介されました。これは、死人にできること(例:静かにする)は行動とは言えず、明確な行動指示が必要であるという考えに基づいています。また、指示は一つずつ、確認と褒めを組み合わせることが効果的だそうです。これも自分の授業ではついついまとめて言いがちなので気をつけたいところです。

二日目は、褒め言葉をなるべくたくさん書いてくださいというものから始まり、不適応行動を減らすにはどうしたらよいのか、行動を変えるにはどうするのか、また行動を変える言い方がある等応用行動分析学やマズローの欲求段階説等の理論を交えながらモチベーションの秘訣について話が展開されていきました。このあともお品書きは続き、例えば「勉強のコツ」についてはまず、五円玉の柄を覚えているか、というお題には皆で頭を悩ませました。(身近な五円玉なのに意外とわからないものです。)そして、どうしてその柄なのかというお話から、五円玉の柄にもストーリーがあり、一つのことを深く調べるという行為は社会科の授業の勉強のコツである、またそれぞれの教科によって勉強のコツは違う、という話で締めくくられ、学びの面白さや深さについて再考させられました。間違いを楽しみ、目標をもって続けること、できるまであきらめないこと等、普遍的な言葉ではありますが、講演の内容がこれらの言葉に説得力を与え、実践に結び付く具体的なものとして伝わってきました。その他にも先生のネットラジオの相談内容をいくつか紹介していただいたりと、お品書きの内容は本当に様々で、二日目の終わりには、すっかり満腹、お品書きを十分味わってお腹いっぱいになり研修会を終えました。

今回の講演を通して、この自由選択講演そのものがモチベーションを高めるための一つの仕掛けとなっていたことに気づきました。参加者が「選択」することで意欲を高め、自分で選んだことへの責任を持たせる学習者の自律性にもつながるのではと感じました。渡辺先生曰く、最大のモチベーションの秘訣は、「自分がワクワクすること」だそうです。人をワクワクさせるにはまず自分がワクワクする、本当にそうだと思います。

教師会のホームページから、当日の録画を観ることができますので、今回の研修会に参加できなかった方はぜひ一度ご覧いただき私たちが感じた「ワクワク」を追体験することをお勧めします。

Conférence et atelier « Appréhender le mécanisme de motivation des apprenants de japonais du point de vue du fonctionnement cérébral »
(Association Culturelle Franco-Japonaise de TENRI M Kōichi IWAKIRI)

30/05/2025
SUGIMOTO Nobuko

去る 5 月、第9回フランス日本語教育研修会の中で行われた岩切耕一先生による『脳の働きを元に学習の動機づけの機序を考える』と題した勉強会に参加させていただいた。
※この講演は前日の『日本語教師のためのカウンセリングマインドの基本知識』から継続して2回目の講演として行われた。

内容としては、以下の通りである。
1.ヒトの脳の分類とその主な機能
脳の各名称を正面から見た4つの脳の位置関係の図で示し、それぞれの働きや機能を説明。
更に脳の部位別にみる学習の機能と動機づけの特徴を表にまとめ、わかりやすく説明された。
2.心理学的学習と動機づけ
外発的動機づけによる行動主義心理学と内発的動機づけによる認知主義心理学に分類して心理学における「学習」とは、ヒトを含む動物が経験によって行動を変容させていくことを説明。
3. 学習意欲を支える5つの動機
外発的動機/生理的動機・社会的動機・親和と承認動機
内発的動機/好奇動機・達成動機
それぞれの説明と「メタ動機づけ」の説明。
⒋ 人間の欲求と動機づけの関係
ハル「動因低減説」・マズローの要求5段開設・デシの自己決定理論を説明。
⒌ 脳の働きを元に学習の動機づけの機序を考える。
ポール・マクリーン「脳の三層構造説」・学習の5つの動機づけと三層の脳の関係・学習の動機づけの機序を考える。
⒍ワークショップ;質問紙法『自我強度尺度』をやってみよう! 
精神的な力の程度である自我の強さは学習の動機づけに影響を与えると考えられている。
別紙で配布されたプリントを使って、参加者自身で自我強度尺度を質問に答えながら算出してみた。
【講演の様子と感想】
1. 講演の様子 前日同様に多くの知識をたった一時間半で説明されるためのプリントの作成が 本当にご苦労されたようだった。参加者はプリントに集中しながらメモをとられている方が大半だった。ワークショップの直前で先生が「これらを知って、うまいことやってください。」と言われ、みんなが大笑いした。
2. 講演の感想
心理学を駆け足で学んだような感じだった。ワークショップの計算方法が複雑で、周りの人と助け合って行っていた。もう少しシンプルな計算方法だったらよかったことと、出た結果を平均値と比べ、どう分析すればよいのか分かりづらいと思った。
心理学とは脳化学が無い時代からあった学問としてとても歴史がある学問だと思う。それだけに奥が深くちょっと勉強しただけでは歯が立たないと感じた。人間相手のことなので実習が本当に大切なのだと心から実感した。
将来、私自身もカウンセリングなどを受けることでさらに理解できるかもしれないと思った。

Conférence-atelier « Réguler sa motivation, ou se motiver à s’auto-réguler ? »
(Maison de la culture du Japon à Paris M Jun ARISUE)

30/05/2025
BRAND Nayuta

蟻末先生のワークショップでは、自分の学習行動や、学習者の学習行動について振り返りました。教育現場では、いま、フォーカスが知識伝達の「教育」から、個人個人が知識を自分の経験と結び付け、構成していく「学習」へとシフトしているので、学習の自己調整の方法を意識することがますます大事になっていくとのことでした。
まず、チェックシートを使って、参加者それぞれが自分自身の動機付けや、学習行動を振り返って浮かび上がらせました。例えば、〈内容が面白い、知りたいと感じたとき〉に一番一生懸命に学ぶというWS参加者が一番多かったです。グループでの話し合いでは、学習者の為に、効果のありそうな学習行動やストラテジーを勧めたりしているが、自分自身の学びに関しては、あまり気を使っていないことに気づいたという声も聞かれました。
チェックリストの行動を、その裏にある自己調整的要素に結び付け、それらの要素の分類について考えました。私にとって、特に興味深かったのは、自己効力感(自分ができると感じる)はすごく大事だが、その反面、あまり学習ができていない人ほど、自信があるケースがあるとのことで、その場合は、メタ認知モニタリング(自己の学習を客観的に意識し分析すること)がうまくできていないのではないかとのことでした。また、モデリング(他人の行動を見て、自分が変わる)の大事さや、援助要請ができる環境をつくること、でも、教師が答えを教えると、学習者が学べなくなることを意識する事なども興味深かったです。自己教示(自分で声に出して説明しながらやる)も、はじめて意識しました。
2つの事例(いろどりの構成、出前多読サロン)から、学習の際に、学習者の中で、どのような自己調整や動機付けが起こっているのか、分析しました。最後に、それぞれの授業を振り返り、あまり使っていない要素をどのように取り入れられそうかグループで話し合いました。既に内容や目標が外から定められているコースと、趣味のためのコースでは、出来る範囲が違うという話になりました。
ChatGPTに蟻末先生の論文を読み込ませ、質問ができるようにしたというリンクも紹介してくださいました。そのようなテキストや資料を入れることで、その資料と対話しながら内容を学んでいくことができるようになるとのことで、ChatGPTの使いかたについても勉強になりました。
今回のワークショップで、学びの自己調整の様々な側面が頭の中で整理されて、授業を組み立てるときのツールとして使えるようになったと思います。蟻末先生の論文が発表されたら、ぜひ読んでみたいと思いました。
蟻末先生、どうもありがとうございました。

Sessions parallèles « B : Conférence »

(M Michiharu WATANABE)

29/05/2025
SEKI Kuniko

 学習者の問題行動(私語、立ち歩き、かんしゃく、パニック、暴言等)に困っている方はいませんか? いわゆる「荒れた」クラスの、不適応行動を改善するアプローチについて、行動分析学の専門家でもある渡辺道治先生にご指南いただきました。
 渡辺道治先生によると、人間は一日に2万~3万の行動を行っているそうです。その行動パターンは以下の4つに分かれます。
獲得(Access)…何かがほしくて行う行動
逃避(Escape)…何かから逃げたくて行う行動
注目(Attention)…自分を見てほしい、注意を引くための行動
感覚(Sensory)…その行動からくる感覚が楽しくて行う行動
 問題行動を行う学習者がいた場合、その問題行動が①~④のいずれに当てはまるのかを考えることが大切です。若年者の不適応行動のほとんどは、③の注意喚起行動なのだそうです。渡辺道治先生は、ご自身のラジオ番組に寄せられたリスナーからの相談を例として、どのようにしたら不適応行動がなくなるかについて説明して下さいました。
 リスナーからの相談
 3才の息子が母親をたたく。息子にたたかれると、母親は息子をぎゅっと抱いて「痛いよ、ママは悲しいよ」と息子に伝えるが、効果なし。どうすれば、息子は母親を叩かなくなるのか?
 渡辺道治先生の分析(見取りの物差し=行動予測パターン)
 息子が母親をたたく➡母親は息子をだきしめ、声をかける➡息子はまた母親をたたく

 渡辺道治先生の解決策
 息子が母親をたたく➡母親は部屋から出るなど、息子と距離を置き、構わない➡すると…?
 この男の子の母親をたたく行動は、見事になくなったそうです。この事例からわかることは、何の変化も得られない行動は減っていくということです。正に、目からウロコでした。不適応行動への対処については、渡辺道治先生の『特別支援がガラっと変わる「見取りの物差し」:応用行動分析学はじめの一歩』という著作に詳しいそうです。ご興味のある方は、ぜひご一読を。
 午前の部に引き続き、午後の自由講演も渡辺道治先生の情熱とユーモア、行動分析学の専門家としての的確かつ深い知見にあふれる時間となりました。残念ながら参加が叶わなかった方々に、少しでも当日の様子が伝われば幸いです。渡辺道治先生、ありがとうございました!

Comptes-rendus de terrain « mise en œuvre du projet « Mer » »

(EKKA Mme Eiko SENDA)

30/05/2025
HAYAKAWA Yuko

オンライン授業の可能性として、「海をテーマにした授業実践」プロジェクトについて。
まずは前日にあったEKKA についての紹介があり、その後プロジェクトについてのお話が続いた。
EKKAの保護者の一人からの縁で海の清掃活動、海の啓蒙活動をしたいと相談され企画がスタート。さやかさんという方がメイン人物。
オンラインでの運営で、参加者のこどもたちがそれぞれ役割を決め、例えばダイビングの種類を調べ、それについてクイズを作る。それに先立ち、まずは写真などを見て勉強する。オンラインで息を止めるトライをしたりする。
オンラインであるからこそ、自分の体を使うアクティビティを積極的に導入。
他のアクティビティとして、深層海流について書かれたものの音読もある。
事前課題として、言葉を絵にするという宿題を与えることもある。これは親子の日本語での会話を増やすきっかけにもなっている。また何年後どれだけ水位が上がり、どの国が水面下に沈んでしまうのかを考えるという海面シミュレーションという取り組みもある。毎回授業の最後に参加者に感想を確認すると、意外な発見があるそうだ。
オンラインの可能性・メリットとしては、以下の点が挙げられるという。
―日本語が共通語になる環境で実施するための講師候補が増える。
―チームティーチングがやりやすい。
―ゲストを呼びやすい。
―よりオーセンティックな環境を作れる。

ただし、メリット・デメリットは表裏一体であるという側面もあり、例えば参加は手軽だが辞めやすい、ということが挙げられる。
千田氏としては、今後も気軽に日本語を続けて行くことができる環境を作っていきたい、ということである。

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